踏み潰されて餌にもなれずに 鬱蒼とした樹海の中に、一人の少年がいた。 その少年が何者なのか、何故森の中にいるのか、それは少年本人にしか知り得ない。仮に少年が森に迷い込んだ哀れな村人であろうと、もしくは尊き血が流れた高貴な身分であっても、はたまた異なる世界から迷い込んだ異邦人だとしても、それはこの森を彷徨う中で何の意味もない。 ただ確かなのは、少年がこの森を抜け出そうとしている事。そして少年が迷い込んだこの樹海が、人を飲み込んで離さない人喰いの森だと呼ばれている事だった。 この人喰いの森には、人喰いの化け物が住んでいる。それらは森に入り込んだ者を騙し、罠にかけ、追い詰め、捕らえ、溶かし、骨に至るまで食い尽くす。少年はそれを知っていた。 そして厄介な事に、人喰いの化け物は人を真似る。本来の悍ましく恐ろしい姿を隠し、可憐で美しい少女の振りをして獲物を誘い、腹を満たすという。少年はそれも知っていた。 だがその化け物と出会った時、どうすれば良いのか。一目散に逃げるべきか、身を隠せば良いのか、それとも天に祈るしかないのか。少年はそれを知らなかった。 故に、少年は立ち尽くすしか無かった。髪飾りを付けた美しい少女がこちらに背を向けて、糸で包まれた蠢く塊を持っていたとしても。 少年が出会ってしまったのは、アトラの蟲惑魔と呼ばれるモノだった。 本体は巨大な毒蜘蛛。疑似餌とされる少女体に誘われるまま森の奥へと進むと、本体が持つ猛毒を注入され身動きが取れなくなり、糸に包まれて餌として巣に連れ去られてしまう。捕まると生存確率は非常に低い、蟲惑魔の中でもかなり危険な個体。蟲惑魔を研究する者たちにはそう評されていた。 更に付け加えるならば、その性格は凶暴であり残忍。捕らえた餌で”遊び”を行う時こそ、アトラの少女体は本当の恐ろしさを発揮する。怪しい笑みを浮かべる口元は恐ろしく釣り上がり、人間に近い身体を器用に使って責め苦を与え獲物を苦しめる。森の奥から聞こえる悲鳴の殆どは、アトラの蟲惑魔が捕らえた獲物の悲鳴や断末魔だと言われている程だ。 そんなアトラの蟲惑魔を見て、少年は気がつけば腰を抜かしていた。進めども進めども果てが見えない森を彷徨って疲れ果てた彼に、そこから逃げ出すほどの力は残っていなかったようだ。 少年の尻に潰された葉ががさりと音を鳴らす。その音に釣られて振り向いた。少女のように見える化け物と、その隣にいる巨体を持った蜘蛛の化け物が。 2つの瞳と8つの目玉は、無感情だが確かに少年を見つめている。少年は喉から呻くようなか細い悲鳴を漏らすのと同時に、下半身から黄色い液体を漏らしズボンに染みを作った。 持っていた繭を隣の巨大蜘蛛に預けた少女体は、尊厳とアンモニア臭を垂れ流す少年をじっと見下ろす。そして嗜虐心を隠さない笑みを浮かべると、少年の股間へと顔を近づけ…直ぐさま顔を顰めて、身体を離していった。 いきなり股間を踏み潰されて目を白黒させていた少年は、嫌悪感を顕にしている少女体を困惑した様子で見つめていた。 そして餌として糸に捕らえられなかった事への安堵と、見た目は美しい少女であるアトラの蟲惑魔に汚物のように扱われた事への少しの不満感を感じ…次の瞬間、身体が宙に浮き上がった感覚に悲鳴をあげた。ズボンの端にくっついた蜘蛛糸に振り回され、そして近くの水場へと放り投げられたのだ。 ズボンと下着をまとめて剥ぎ取られ、びしょ濡れになりながらも水場から這い出した少年が目にしたのは苛立った様子で少年を睨みつける少女体の姿。そして今度は上着に糸をつけられ、再び振り回されながら衣服を剥ぎ取られていった。 やがて少年は靴下まで脱がされて柔らかい苔の上に転がされていた。身体は磔にされたように仰向けで地面に拘束されており、糸によって手足を動かす事ができない。やはり捕食されてしまうのか、と少年は再び恐怖する事しかできなかった。 だがいつまで待っても少女体はおろか、巨大蜘蛛である本体さえ拘束された少年の元にはやって来ない。拘束から抜け出そうとしても、手足を縛り付けている糸は少年では微動だにしない程頑丈だ。どうする事もできず、顔を動かして辺りを見渡していると少し離れた場所で少女体が何かをしているのを見つける事ができた。 アトラの少女体は連れていた繭に抱きつき、腰をぐりぐりと動かしている。彼女の動きと連動するかのように、繭も中で必死に蠢いているようだ。やがて力尽きたように繭は動かなくなるが、アトラが再び腰を動かし始めるとまた動き始めた。 だが悶えるかのように必死に動いていた繭も、時間が経つに連れて次第にぴくりとも動かなくなっていった。するとアトラは満足したかのような表情を浮かべ、跨っていた繭から腰を上げ…びしゃびしゃ、と股の間から白い液体を漏らして、恍惚とした表情で空を見つめていた。 その時少年はようやく理解した。繭の中身は、あの美しい少女体に犯されていたのだと。身動きは取れず、抵抗する事もできず、命の源を全て精液として吐き出して動けなくなるまで…死ぬほど、気持ち良くなっていた事を。 ぞくぞく、と少年の背筋に震えが走る。そして気がつけば、縮こまっていた少年の股間はすっかり硬さを増していた。次は自分の番だと考えると、死の恐怖を興奮が塗り潰すほどだった。 巨大蜘蛛が動かなくなった繭を引きずっていくのと同時に、少女体が少年の元へとやってきた。股から垂らした白濁液を指で掬い口に運ぶその姿は、少年の興奮を余計に煽ってくる。 早く犯して欲しい、気持ち良くして欲しい…そう思って、情けなくも自分の肉棒をぴくぴくと跳ねさせる少年。そんなマゾ雄へようやく目を向けた少女体は、害虫を見るかのような目線で少年を見下ろしている。そして無様に跳ねているその物体を見て…。 ぺっ。 少年の顔に、唾を吐いた。 何が起こったのか理解できず、呆然とする少年。化け物に、昆虫に、少女に、雌に。失望した表情で顔面に唾を吐かれるなど、想像した事も無かったのだろう。 溜め息を吐いた少女体が指を鳴らすと、少年の手足を縛っていた糸が解けていく。そして関心を無くした餌…いや、餌にすら値しなかった少年から離れようとして、再び嫌悪感を抱いた表情を浮かべた。自らの足に抱きついている餌以下の害虫に、機嫌を損ねられたのだ。 少年はもはや森からの脱出や死の危険など頭には無く、ただ目の前の少女に相手をしてもらおうと必死だった。見ているだけではなく、自分も味わいたい。あの穴に挿入したい。犯されたい。それだけの一心で、人喰いの化け物に情けなく縋り付く。だが呆気なく振り飛ばされ、ごろごろと土塗れになって転がり…それでもまだ勃起を保っていた肉棒が感じた刺激に、悲鳴混じりの喘ぎ声を出し始めた。 汚物を見るかのような表情を浮かべて、少年を見下す少女体。その片足は少年の粗末な肉棒に添えられ、ぐりぐりと踏み潰している。豚のような鳴き声を出す餌以下の存在を鬱陶しそうに見下しながらも、竿をなぞるように足を動かして丁寧な刺激を与えるその動きには確かな技術があった。 踏みつけコキの刺激に情けない声を出していた少年は、射精寸前で離れていく足の重みを名残惜しそうに見つめる。その目にもはや理性の光は無く、数刻前まで化け物として恐怖していた相手に再び泣きついておねだりをしようとして…睾丸に感じた衝撃と痛みに、汚らしい悲鳴をあげた。 玉を蹴られて本気で苦しむ少年の姿に、手を叩いて笑うアトラ。それでも勃起を保つ少年の肉棒を愉快そうに見つめると、今度は足の裏を使って皮を被ったままの少年の鈴口を踏みつぶし刺激していく。それ以外にも足の親指と人差し指で細い肉棒を挟んでちゅこちゅこと上下したりと、先ほどよりも積極的に足で少年に快楽を与えていった。 乱雑で乱暴であまりに強い刺激に、睾丸の痛みを感じながらも少年は絶頂へと導かれていく。そして遂に、尿道から精液を吐き出そうとした…その時。 少年はアトラに肉棒を踏み潰され、自分の顔と身体に向かって全力の射精をしてしまうのだった。 これまでに出した事の無いほど無様で情けない声と共に、びゅくびゅくと自分の生殖汁で自分の身体を汚していく少年。少女体の膣に注ぎ込む事はできず、足という快楽を与えてくれた相手にぶっかける事すらできず、全て自分の身体で受け止めてしまうあまりにも生産性の無い無駄射精。それでも少年にとっては、気を失うほどに人生で一番気持ちの良い射精だった。 足コキマゾ射精快楽の余韻から解放された少年が目を覚ますと、そこにアトラの少女体の姿は無かった。カピカピになって異臭を放つ自分の身体を引きずり、ふらふらと森を歩いていく少年。 やがて探し求めていた姿を、アトラの蟲惑魔を見つけて駆け出そうとして…ずぼり、と地面を踏み抜いて穴に落ちてしまった。 意識を取り戻した少年は、脳が溶けるほど甘い香りが漂っている事に気がついた。 何とか落ちた穴から抜け出そうとするが、貧弱な身体では中々登り切る事ができない。やっとの思いで穴の縁に手をかけ、上半身を乗り出し…穴の外の光景を見て、それ以上動けなくなった。 そこにはアトラの蟲惑魔に加えて、4人もの美しい少女の姿があった。言うまでもなく、それは全員蟲惑魔だ。人の形を真似た、食人を行う化け物だ。少し奥を見れば、大量の頭蓋骨がある事からそれは言うまでもないだろう。 そして、アトラを含む蟲惑魔たちは…少年など意にも介さず、全員が食事を行っていた。それも、各々がとても幸せそうに、満足そうに、人間の雌としての穴を使って。 繭に抱きつき、搾り取るように腰を振るアトラの蟲惑魔。その他にも、気だるそうにしており男に腰を振らせている蟲惑魔。幼い身体で色気を振りまいている蟲惑魔。砂地獄の中で愛おしそうに男に抱きつく蟲惑魔。甘い香りを振りまき、その場の男たちの理性を無くしているお姉さんのような蟲惑魔。合計5人、正しく言うならば5匹もの蟲惑魔と何人もの男たちが、いやらしく混じり合っている。ただ一人、少年を除いて。 必死になって穴の縁にしがみつき、その光景をじっと見ていた少年。だが登り切る前に力が尽き、再び穴の底に落ちてしまった。頭に強い衝撃を受け、少年の意識は遠のいていく。何かを求めるように手は穴の外へと伸びるも、ぼやけていく視界には何も映らない。 だが目の前が闇に染まりきる前に、穴の外に誰かの影が見え…そして…。 ぺっ。 目を覚ますと、少年は穴の外で倒れていた。 辺りは変わらず森のままだが、薄暗かった樹海とは違い光が仄かに差し込んでいる。もしかすると、出口が近いのかもしれない。 森に迷い込んだばかりの少年であれば、脇目も振らずに森の出口へと駆け出していただろう。だが今の彼は出口には目も向けず、むしろその逆…樹海の奥を、名残惜しそうに見つめている。 立ち上がる事すらせず、土塗れの手を使って自分の肉棒をこすこすと擦る。だが物足りなさ気な表情を浮かべており、肉棒の硬さが増す事すら無い。 やがて少年は立ち上がり、ゆっくりと歩き出し…森の近くの一本の倒木へふと目を向けた。その木には少し小さい洞がある、啄木鳥の巣だったのかもしれない。 しかしそれは穴。ただの穴だ。締め付けてくる事も無い、暖かくも無い、人を模してすらいない。 だがそれでも、少年…いや、餌未満の彼にとっては、それが求めている物に見えた。 繭に抱きついていた彼女を思い出しながら、少年は硬く冷たい穴にゆっくりと自分の粗末な物を入れていく。足で踏まれた経験で、生半可な刺激では快楽を得られなくなった彼にとってはそれが丁度良かった。 へこへこ、へこへこと腰を振る。人喰いの森に飲まれた少年は、もう二度と人には戻れない。 一人の少年の心と尊厳を喰らった当の蟲惑魔は、それを知らずに今日も迷い込んできた旅人を貪るのだった。